土地家屋調査士とは、不動産、土地、建物の表示に関する登記の専門家です。
国家資格が必要な専門性の高い仕事となります。
例えば、増築や土地の分筆などで形が変わったりした場合に、面積形状などを精密に測量することが法律で定められています。
そこで土地家屋調査士はその表示に関する登記を目的として仕事に当たります。
ほかにも、土地の境界線を決める時などは、現地の状況把握や隣接所有者の立会い等を行って公法上の筆界を確認して書類を作成するなど調査から書類の作成と守備範囲が広い業務になります。
そんな土地家屋調査士の仕事はきついと言われることがあります。
一体どんな理由からきついと言われるのでしょうか?
今回は土地家屋調査士の仕事と実態を徹底解析していきます。
タップできるもくじ
土地家屋調査士の仕事はきつい?
土地家屋調査士の仕事は、現場の調査から書類の作成まで多岐にわたるため「仕事がきつい」と言われています。

サト
土地家屋調査士ならではの仕事が厳しいと言われる事情を探ってみましょう!
現地調査が厳しい
土地家屋調査士の仕事に現地調査があります。
土地や建物、その対象物の周辺の調査、測量を行います。
天候に左右されたり、暑い、寒いなど季節に関わらず野外のため、大変厳しい条件の時も多々あるでしょう。
法的な書類を作成するわけですから、適切な調査を行うためには場所によっては厳しい条件の場所も予想され、長時間になることも。
例えば、空き家や空き地など整備されていないゴミや草だらけの場所や傾斜地や高低差のある場所など危険な場所で作業する場合も考えられます。
また、土地の登記の場合は土地の境界線が存在するため、その境界線の目印を見つけるところから仕事が始まります。
境界線は、長年時間がたつと土に埋もれてしまったり、何かの下敷きになってしまったりと見つけるのに苦労することも。
境界線の目印がない場合はヒアリングが必要な場合もあります。
建物の測量についても、雨などの天候に左右され、急な書類の作成や、提出期限がある場合には早急な測量が必要になったり一苦労です。
このように、肉体的な労働もあることも「きつい」と言われる要因になっています。
コミニュケーション能力が必要
土地家屋調査士は人と関わることが多い仕事と言っても過言ではありません。
土地、建物の正確な調査及び査定をするにあたっては、測量などだけでは決めることはできません。
必要に応じて、不動産業者や調査の依頼主、土地の所有者、隣接する土地の所有者、市役所の職員などと立ち会いを行い境界線を確認したり、ヒアリングを行います。
そして、承認の下で捺印してもらうなどの工程を経ます。
様々な人と話し合いを重ねますが、隣接する土地の所有者とトラブルになっている場合には取り合ってもらえなかったり、土地によっては利益ならまだしも不利益が予想される場合は話し合いに応じない人もいます。
このような様々な立場の人に関わりながら、うまく調整を行っていくことは、高いコミニュケーション能力を必要とします。
やはり人間関係は一番苦労し厳しいと感じる面なのではないでしょうか。
移動が多い
先に述べたように、測量などの現地調査を行っていきますが、不動産業者や依頼主が所有している土地が近隣とは限りません。
例えば、遠方の実家を売ることになったので調査してほしいなど、県外への出張などもあり得ます。
車の運転や乗り物に乗っての移動が苦手な方には厳しいかもしれません。
また、このような案件が続いた場合であっても、他の案件の連絡や書類作成も並行して行わなければなりませんので、時間の確保や使い方にも調整が必要です。
まさに肉体労働と事務業の両立。時間のなさが厳しいときもありそうです。
景気に左右されやすい
土地建物は傾向として、好景気の時にはよく動き、戸建分譲やマンションなどの建物が建築されます。
そして、必然的に土地家屋調査士の仕事は増えます。
なぜなら、売買や分与、建設などが発生すれば、測量や登記なども含め、法的な書類は必ず必要になるからです。
土地や建物が何らかの形で動けば、必ず書類や登記、土地家屋調査士の仕事が発生すると言っても良いでしょう。
しかし、逆に不景気になれば売買や工事が減少してしまい、土地家屋調査士の仕事も減少します。
景気が良い時とは逆になります。
どのような職業でも、経済や景気によって左右されますが土地家屋調査士の仕事は特にその側面が強いといえます。
土地家屋調査士の仕事内容
では、土地家屋調査士の仕事はどのようなものなのでしょうか。具体的な仕事のステップを5つのパートに分けてご紹介しましょう。
- STEP
現場調査
土地や建物の現地調査を行います。
測量を行い現在登記されている情報と、現地の現状に差がないか照合調査します。
- STEP
測量・境界確定
新たに登記する図面に必要な数値を、測量していきます。
境界線の確認も行い、精密に測量していきます。
隣地の所有者にも立ち会ってもらい境界を確定していきます。
- STEP
書類作成
調査、測量をした土地の図面をCADやPCで作成します。
そして、登記に必要な申請書や添削書類を作成しまとめます。
- STEP
登記申請・受領
書類がまとまり登記申請の準備が整ったら、書類を法務局へ提出します。
- STEP
引渡し
最後に、依頼主に登記書類を引き渡して業務完了となります。
土地家屋調査士の廃業率
土地家屋調査士の廃業率は公表されていませんが、毎年の土地家屋調査士協会の新規登録者と取消者数(廃業・死亡)は公表されており以下のようになっています。
新規登録者数 | 取消者数 | |
---|---|---|
平成26年 | 376 | 501 |
平成27年 | 418 | 513 |
平成28年 | 383 | 551 |
平成29年 | 367 | 527 |
平成30年 | 287 | 496 |
取消者数が新規登録者数を常に上回っている状況です。
取消者数が多いのは報酬が減少した・会員が高齢化しているなどの点が理由として考えられます。
また、試験の合格率・合格者数などは下の記事を参考にしてください。
土地家屋調査士の年収
土地家屋調査士の平均年収は500~600万円と言われています。
サラリーマンの平均年収が441万円(平成30年分民間給与実態統計調査結果について)なのでサラリーマンより平均年収は高くなっています。
しかし、これはあくまで平均収入ですので独立開業して事務所を自営している人は数千万円稼いでいる人もいるでしょうし、逆にサラリーマンの平均年収より低い人もいるなどかなり振れ幅は大きくなっているでしょう。
土地家屋調査士に向いている人
上記のように仕事を進めていくわけですが、どのような人が土地家屋調査士に向いているのでしょうか?
向いている人としては、
- コミュニケーション能力が高い人
- 探求心がある人
があげられます。
なぜなら、先にも述べたように、土地家屋調査士は依頼主、役所の方をはじめ様々な人と関わり連携しながら時には交渉なども行っていくからです。
ですから、コミニュケーション能力はマストとなる能力です。
ほかには「探求心がある人」も向いているのではないでしょうか。
測量や境界線の発掘などは、その場所について深く掘り下げ、粘り強く調べていく必要があります。
法的な書類を扱うわけですから、責任を持って調べ尽くす姿勢を持つことが大事です。
またそのように何かを細かく調べたり、考えたり、記録したりすることを得意とする人には最適な仕事と言えるでしょう。
将来土地家屋調査士の需要はなくなる?
日々技術革新している昨今、土地家屋調査士の仕事がなくなると耳にすることがあります。
AIの技術やGPSや衛星、5Gなどの通信容量や速度の技術などが発達し、将来的にAIやGPSを利用してどこからでも測量などができると言われています。
また、大容量の情報であってもすぐに情報の受発信ができ、速度も早いため現場への移動も必要がありません。
しかし、現状このような状態になるまでには時間がかかるため土地家屋調査士の仕事はなくならないと思います。
また、ほかの理由としては、現在会員の約半数が60代以上であり、会員の高齢化が進んでいます。
60代以上の会員は10年か20年すれば土地家屋調査士を必ずやめるでしょうから、若い人にとってはチャンスとも言えます。
土地家屋調査士の仕事はきつい まとめ

土地家屋調査士の仕事はきついと言われる理由や仕事の実態を徹底解析してきました。
土地家屋調査士の仕事は肉体労働と事務業の二種類の業務があることから「きつい」と言われることがあるようです。
また、そのような業務を兼務するため、時間の使い方にも工夫が必要なことも要因の一つ。
しかしながら、国家資格を有する専門職として年収も高い職業の部類となります。
土地や建物を取り扱う専門家として、コミュニケーション能力を生かしながら、景気に左右されやすいなどの厳しい条件もありますが、資格を持って一生の仕事として働けます。
また、会員の半数が60代以上ということは、仕事をする上では、将来競合が減るということですからチャンスと考えても良いのではないでしょうか。
土地家屋調査士の仕事がなくなると言われることもありますが、それはもう少し未来の話です。
AIの技術が発達しても、技術者としての仕事はまだまだ健在ですので、資格を取得し活躍しましょう!