土地家屋調査士試験は年に一度に行われる試験で、日程は例年10月に筆記試験、筆記試験合格者はその翌年の1月に口述試験を受けることになります。
土地家屋調査士の口述試験は難易度的には簡単で落とすための試験ではないので、落ちた人は遅刻した人や二日酔いで話せなかった人などよっぽどの人だけだと言われています。
しかし、普段さまざまな試験でも筆記試験はよくありますが、口述試験は限られたものにしかないため、口述型の試験は経験が少ないからと不安になる方も多いです。
そこで今回は土地家屋調査士試験の「口述試験」がどのようなものかその対策をお伝えしていきます!
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土地家屋調査士の口述試験の流れ
口述試験のおおまかな流れと会場の様子をお伝えします。ご自身でもイメージしながら読んでみてくださいね。
試験会場は各地の法務局
土地家屋調査士試験の会場は各地にある法務局で行われることが一般的です。試験会場へは早めに到着するようにしましょう。
試験会場では口述試験を行う順番を決める「くじ引き」が行われます。そして自分の順番が来るまで、別の控室で待ちます。
控室にいる間はテキストや資料を読んだり自由にすることができますが、静かに待機します。
部屋に入る挨拶からスタート
試験の順番が近くなると直前の控え場所まで案内されます。その際上着や手荷物などは控室に置けないため、全て持って移動します。
順番が来ると試験官から「どうぞ」など何かしらの順番が来たことを伝える合図の声があるため、その声が聞こえたらノックをして部屋に入っていきましょう。
ドアを閉めたら「失礼いたします」などの挨拶をして、お辞儀をします。
本人確認
部屋へ入ると手荷物を置く場所と座る場所を促されるので、指示されたところに移動します。
着席し終わると本人確認の質問があります。そこで「受験番号・氏名・生年月日」を試験官へ伝えます。
相手の質問に答える際は、はっきりと大きな声で答えるようにしましょう。
試験官は一般的に2名います。男性2名の場合や男性と女性1名ずつの場合などさまざまです。
本題|口述試験の質問が始まる
本人確認が終わると、早速口述試験の質問が始まります。尋ねられた内容に答えていくだけなので、その他特別しなければならないことはありません。
しかし、答える言葉遣いは常に丁寧に品位を損なわないように注意しましょう。また、自分からたくさん話す必要はないため、聞かれたことにだけピンポイントで答えるようにします。
万が一、答えられなくても試験官側で答えのヒントなどを与えてくれます。
試験時間は10~15分程度
口述試験は答えるスピードによっても前後しますが、大体10~15分程度、質問は10個以上されると思っていた方がよいです。
少し長く感じるかもしれませんが、真剣に自信を持って回答していれば、あっという間に感じると思います。
試験後はそのまま会場を出る
試験が終わると入室時と同じように、退出の挨拶をして試験部屋を後にします。
その後は控室に戻ることなく試験会場を出て、試験は終了となります。
口述試験中に気をつけたいマナー
口述試験は試験官という相手がいる試験なため、第一に失礼のない対応を心掛けなければなりません。試験中に気をつけていただきたいマナーについてご紹介します。
入退室の挨拶
入退室の挨拶はきちんと行いましょう。相手への第一印象は3秒で決まるといわれています。相手によい印象を与えた上で試験に臨む方が気持ちにも余裕が生まれます。
意外とうっかりしてしまうのが、挨拶とお辞儀は同時にせず一つ一つの動作を順番に行うという点です。
緊張していると動作が一緒になってしまう可能性があります。普段から意識して身体に染み込ませておくと、咄嗟の動きで間違うことはなくなります。
服装はスーツが安心、かつ荷物は少なくする
服装はカジュアルフォーマルな服装がよいです。あれこれ考えるのであれば、スーツが無難で外さない服装といえます。またデニムやTシャツといった普段着はNGです。
またこれはマナーではありませんが、持ち物は極力少なくかつ一つにまとめた方がよいです。
先に述べたように試験終了後は控室に戻れません。つまり、手荷物などは全て持ったまま移動しなければならないのです。
控室から試験部屋まであれこれ複数の荷物を持って、もたつくのは気持的にも焦ってしまいますし大変です。シンプルに上着とバッグ一つでまとまるように手荷物はコンパクトにしましょう。
口述質問中は常に丁寧で品のある言葉遣いを意識する
筆記試験にはない点として言葉遣いが如実に相手へ印象を与えてしまいます。どんなに困ったときも、焦ってたときも、決して言葉が乱れるようなことがないようにしましょう。
口述試験はあらゆる点を総合的にみて評価しています。質問に一つ答えられなかったとしても、そこで諦めず真摯な姿勢を保ちましょう。
口述試験で質問されたことのある内容
具体的に口述試験で質問されたことのある内容をご紹介します。皆さんは答えられますでしょうか?
一緒に回答を考えてみましょう。
質問内容①「土地の分筆の登記の申請人は誰になりますか?」

試験管
土地の分筆の登記の申請人は誰になりますか?
上記のような一問一答形式の質問は必ず出題されます。
こういった問題は筆記試験時にたくさん暗記しているため、焦らず自分の知識を伝えるようにしましょう。
質問内容②「土地家屋調査士法第1条に規定されているこの法律の目的はなんですか?」

試験管
土地家屋調査士法第1条に規定されているこの法律の目的はなんですか?
土地家屋調査士法の条文に対する問題は必須といっても過言ではありません。
特に第1条と第2条に関する質問はかなりの高頻度で出題されています。
条文の把握は必ず対策しておきましょう。
(土地家屋調査士の使命)
第一条 土地家屋調査士(以下「調査士」という。)は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第百二十三条第一号に規定する筆界をいう。第三条第一項第七号及び第二十五条第二項において同じ。)を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もつて国民生活の安定と向上に資することを使命とする。
(職責)
第二条 調査士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
質問内容③「筆界特定制度とはどのような制度か説明してください。」

試験管
筆界特定制度とはどのような制度か説明してください。
さまざまな制度や専門用語を説明する質問もあります。
一問一答形式の逆バージョンです。
一問一答では答えられるのに、逆で聞かれると言葉が詰まる…という方も多いです。
このような説明形式の質問に対する答え方にも慣れておく必要があります。
質問内容④
そのほかの質問内容として以下のようなことを聞かれます。
最低限ここに書いてあることは答えられるように対策をしておきましょう。
- 土地家屋調査士法2条
- 権利に関する登記とは何か
- 地図の記録事項
- 地図訂正はどんな時にされますか?また、誰から申請しますか?
- 調査士の秘密保持にでてくる正当な事由とはどんなものがありますか?
- 各階平面図の記載事項
- 土地家屋調査士法2条がある理由
- 土地家屋調査士がしてはいけないこと
- 創設的登記とはどのような登記か?またその具体的な登記
- 表示登記に対抗力はあるか?また例外はあるか?
- 地積、地目の定義
- 農地を宅地に変更するときの注意点
- 建物表題登記の添付情報
- 建物表題登記の所有権証明書の具体的な情報
- どのような図面が地図として備え付 けられる?
- 土地分筆登記の申請人は?
- 土地地積更正登記の添付書類は?
- 合筆制限は?
- 筆界特定とは、どのような制度?
- 土地家屋調査調査士の業務
- 土地家屋調査士の欠格事由を3つ答えて下さい。
- 土地地積更正登記の申請人と添付情報
- 分筆の登記のときに地積更正をしなくてもいい場合
- 14条地図を登記所に備え付ける理由
- 14条地図の種類3つ以上
- 筆界特定制度とは
- 筆界特定と筆界確定の関係
- 土地家屋調査士が行うことができる事務
- なぜ連合会に登録するのか
- 土地家屋調査士会に入会する意義
口述試験対策|おすすめテキストや勉強法のポイント
口述試験でおすすめのテキストやこれだけは絶対に抑えていただきたい「勉強するポイント」をご紹介します。
おすすめテキスト【土地家屋調査士 本試験問題と解説&口述試験対策集(日建学院)】
勉強をする上でおすすめテキストは日建学院から出版されている「土地家屋調査士 本試験問題と解説&口述試験対策」という教材です。
筆記問題はもちろん口述問題の対策も網羅しているため、幅広くこの一冊で勉強することが可能です。
まずはこのテキストで勉強して、どうしても苦手な部分やわからない点は別途資料を用意すると、教材が無駄に多くならずコンパクトにできます。
土地家屋調査士試験を独学で勉強するためのおすすめテキストをもっと知りたい人は以下の記事を参考にしてね。
勉強のポイント①【土地家屋調査士法の1条と2条は暗唱できるようにする】
条文に対する質問の頻度が高いです。特に「第1条」と「第2条」に関しては暗唱できるくらい、緊張していても口から勝手に言葉が出てくるくらいにしておきましょう。
勉強ポイント②【実際の口述試験を想定した環境で回答する練習を行う】
勉強というと机に向かってペンを走らせて問題を解く、というイメージが強いですが口述試験対策は通常の勉強とは少し違ったアプローチをしましょう。
すでに筆記試験を受けて合格しているのですから、ある程度の知識は十分に備わっているはずです。
あとはそれを「紙」ではなく、「人」にアウトプットできるかが重要になります。そのため、その状態を想定した勉強を行う必要があります。
例えば前述で示した質問内容③の対策として、制度や用語の説明を言葉に出して話す練習や条文を声に出して暗唱する、など「声」を使う勉強を意識しましょう。
誰か相手がいる方は、その相手に問題を出してもらい回答する練習をするとさらに有効です。
土地家屋調査士の口述試験 まとめ
いかがでしたでしょうか?土地家屋調査士試験の口述試験についてお話してきました。
口述試験での合格率はほぼ100%で不合格になる方はほぼないとされています。しかし、必ず全員が受かるというわけでは決してありません。
せっかく難しい筆記試験を潜り抜けたのですから、口述試験で落ちたくないはずです。気を抜かず最後まで試験に挑んでください。
ぜひ、「一般的なマナー」と「声に出して答える練習」を勉強の中に取り入れてみてください。