宅建の8種制限をわかりやすく解説。手付金や契約不適合についてもまとめて紹介。

8種制限

※ 文中の灰色の部分はタップやクリックすると答えが見れます。

8種制限は毎年出題される頻出分野で、クーリング・オフ制度と手付金等の保全措置がよく出題されます。

細かいひっかけが多くなかなか難しい分野ですが、がんばっていきましょう!

次の記事 報酬に関する制限

8種制限とは

8種制限とは買主を民法の規定よりさらに保護するために宅建業法が定めているもので、売主が宅建業者買主が宅建業者以外の場合に適用されます。

素人の一般消費者を保護するための制度なので業者間の売買には適用されないので注意してください!

サト
サト

業者間には適用されないというのを問題を解いていると忘れてしまうことがあるよ!

クーリング・オフ制度 頻出

クーリング・オフってなに?

クーリング・オフとは、いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。

サト
サト

クーリング・オフって聞いたことあるよね!

次に4つの特徴をおさえておこう。

クーリング・オフについての重要ポイント
  • 意思表示は書面で行う必要がある。
  • 書面で行った意思表示は書面を発したときに効果が生じる。(書面が相手に届かなくてもクーリング・オフの効果が生じるということ)
  • 契約を解除したら原状回復義務が生じる
  • クーリング・オフで契約を解除しても、損害賠償や違約金は請求されない。
  • 申込者(一般消費者)に不利な特約は無効。有利な特約は有効。

クーリング・オフができない場合

どんな契約でもクーリング・オフで契約を解除できるとしたら、売主の宅建業者は不安定な立場に置かれてしまいます。

したがって、買主に購入の意思が認められるような場所で契約した場合はクーリング・オフができなくなります。

具体的には以下の3つです。

クーリング・オフができなくなる場所

  • 売主となる宅建業者の事務所
  • 代理・媒介の依頼を受けた宅建業者の事務所
  • 買主が自ら申し出た場合の、買主の自宅や勤務先(※ 業者が提案した場合はクーリング・オフできる)

また、以下のような一定の事由が生じたときもクーリング・オフができなくなります。

クーリング・オフができなくなる事由

  • 売主である宅建業者からクーリング・オフについて書面で告げられた日から起算して8日を経過したとき。
  • 買主が、宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったとき。

※ 事務所以外の場所で買い受けの申込みを行い、事務所で売買契約を締結した場合はクーリング・オフを利用できるので注意してください。

クーリング・オフを適用できるかは買い受けの申込みの場所が事務所かどうかで判断します。

買い受けの申し込みの場所が事務所ならクーリング・オフを適用できないし、事務所以外なら適用することができます。

※ クーリング・オフが適用できなくなるのは、クーリングオフを書面で告げられた日から起算して8日ですので、月曜日に告げられた場合、期限は翌週の曜日になります。曜日ではないので注意してください。

また、売主がクーリング・オフについて告げなかった場合は8日を経過してもクーリング・オフを利用して契約を解除することができます

クーリングオフの告知書

告知書には、次の事項が記載されていなければなりません。

けっこう細かいので記事したの過去問で復習しておきましょう。

  1. 買受けの申込者又は買主の氏名及び住所
  2. 売主である宅建業者の商号又は名称及び住所並びに免許証番号(媒介はいらない)
  3. 告げられた日から起算して8日を経過する日までの間は、申込みの撤回又は売買契約の解除を行うことができること
  4. 売主は、申込みの撤回又は売買契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができないこと
  5. 申込みの撤回又は売買契約の解除は、その旨を記載した書面を発した時に効力を生ずること
  6. 申込みの撤回又は売買契約の解除があった場合は、宅建業者は、遅滞なく、手付金その他支払われた金銭を全額返還すること

自己の所有に属しない物件の契約の制限

原則

自己の所有に属しない土地・建物などの売買で自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはいけません

例外

以下の場合は例外としてOKです。

  1. 買主が宅地建物取引業者であるとき
  2. 売買契約等(予約はOK、停条件付はNG)により所有権を取得できることが明らかであるとき
  3. 未完成物件の売買で受領する銭について保全措置を講じているとき

損害賠償額の予定等の制限

宅建業法では損害賠償額の予定などについて一定の制限を設けることで、買主が莫大な損害賠償請求を受けることがないように保護しています。

具体的には、損害賠償の額を予定しまたは違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の10分の2を超える定めをしてはいけません。

また、代金の10分の2を超える部分については無効となります。

損害賠償の額を予定しなかったときは、実際に生じた損害額を請求できます。

契約不適合責任の特約の制限

住宅の売買契約を締結したのに、引き渡された家が雨漏りが酷くて住めないなど、契約の内容に適合していない場合に売主が負う責任を契約不適合責任と言います。

買主はこのような場合、追完請求権などを請求することができます。

詳しくは、「契約不適合責任とは?」で記事にしているので見てください。

サラッとでも読んでおいた方が理解が進むと思います。

宅建業法では、民法の契約不適合責任の規定より手厚く買主を保護しており、内容は以下のようになります。

原則

民法の規定より買主に不利な特約は無効。

なお、特約が無効になった場合は民法の規定に従い、契約不適合責任の期間は不適合を知った時から1年以内となります。

例外

契約不適合責任の期間を買主に引き渡した日から2以上とする特約は有効。

期間を引き渡した日から1年などと特約するのは買主に不利なので無効です。

(民法では不適合を知った時から1年以内と定めています。)

手付金等の保全措置 頻出

原則

宅建業者は手付金等を受け取るに保全措置をすることが必要。

サト
サト

業者が倒産したり二重売買されても最悪、買主にお金が全額戻ってくるようにするためだよ。

手付金等とは代金に充当されるもので、契約の締結の日以後引渡し前(×建築工事の完了まで)に支払われるものをいいます。

保全措置の方法としては、

完成物件保証委託契約、保証保険契約、手付金等寄託契約
未完成物件保証委託契約、保証保険契約

例外

以下の場合に当たる場合には保全措置を講じることなく手付金等を受領することができます。

  • 買主が所有権の登記をしたとき
  • 完成物件の場合は代金の10以内かつ1,000万円以下の場合
  • 未完成物件の場合は代金の5以内かつ1,000万円以下の場合

※中間金等をもらう場合には、すでに受領している手付金等の額を合わせた全額について保全措置を講じる必要があります。

手付金の性質と額の制限

民法にも手付の規定がありますが、宅建業法では買主をより保護するために以下のような規定を定めています。

関連 民法の手付について

  • 宅建業者は代金の10分の2を超える額の手付を受領することができない。
  • 宅建業者が、手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであっても解約手付とみなされる。
  • この機手に反する特約で、買主に不利なものは無効となる。

※ 保全措置を講じていても代金の10分の2を超える手付金は受領できないので注意してください。

割賦販売契約の解除等の制限

割賦販売の契約について賦払金の支払がされない場合、30日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、契約を解除し、残金の支払を請求することができません。

そして、この規定に反する特約は、無効となります。

割賦販売等における所有権留保等の禁止

原則

所有権留保は禁止。

売主は割賦販売の場合でも、建物を引き渡すまでに登記の移転など売主の義務を履行する必要がある。

所有権留保とは売買契約を締結したにもかかわらず、代金が全額支払われるまで買主に所有権を移転させないこと。

例外

例外として以下の場合には所有権を留保することも認められます。

  • 売主である宅建業者が受け取った金額が代金の10分の3以下の場合
  • 10分の3を超える場合でも抵当権などの担保が付けられない場合

8種制限に関する宅建過去問

令和3年12月 問43

宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではない法人B又は宅地建物取引業者ではない個人Cをそれぞれ買主とする土地付建物の売買契約を締結する場合において、宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

なお、この問において、買主は本件売買契約に係る代金の全部を支払ってはおらず、かつ、土地付建物の引渡しを受けていないものとする。

  1. Bは、Aの仮設テント張りの案内所で買受けの申込みをし、その8日後にAの事務所で契約を締結したが、その際クーリング・オフについて書面の交付を受けずに告げられた。この場合、クーリング・オフについて告げられた日から8日後には、Bはクーリング・オフによる契約の解除をすることができない。
  2. Bは、Aの仮設テント張りの案内所で買受けの申込みをし、その3日後にAの事務所でクーリング・オフについて書面の交付を受け、告げられた上で契約を締結した。この書面の中で、クーリング・オフによる契約の解除ができる期間を14日間としていた場合、Bは、その書面を交付された日から12日後であっても契約の解除をすることができる。
  3. Cは、Aの仮設テント張りの案内所で買受けの申込みをし、その3日後にAの事務所でクーリング・オフについて書面の交付を受け、告げられた上で契約を締結した。Cは、その書面を受け取った日から起算して8日目に、Aに対しクーリング・オフによる契約の解除を行う旨の文書を送付し、その2日後にAに到達した。この場合、Aは契約の解除を拒むことができない。
  4. Cは、Aの事務所で買受けの申込みをし、その翌日、喫茶店で契約を締結したが、Aはクーリング・オフについて告げる書面をCに交付しなかった。この場合、Cはクーリング・オフによる契約の解除をすることができない。

答え:1

  1. 誤り:仮設テント張りの案内所クーリングオフの適用があります。また、書面で告げられた日から8日経過するとクーリングオフできなくなるので、口頭で告げられただけなら経過期間にかかわらず契約を解除できます。
  2. 正しい
  3. 正しい
  4. 正しい
令和3年12月 問27

宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではないBとの間で建物の売買契約を締結する場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. AB間で建物の売買契約を締結する場合において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額についての特約を、代金の額の10分の2を超えて定めた場合、当該特約は全体として無効となる。
  2. AB間で建築工事完了前の建物の売買契約を締結する場合において、AがBから保全措置が必要となる額の手付金を受領する場合、Aは、事前に、国土交通大臣が指定する指定保管機関と手付金等寄託契約を締結し、かつ、当該契約を証する書面を買主に交付した後でなければ、Bからその手付金を受領することができない。
  3. AB間で建物の売買契約を締結する場合において、Aは、あらかじめBの承諾を書面で得た場合に限り、売買代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができる。
  4. AB間で建築工事完了前の建物の売買契約を締結する場合において、売買代金の10分の2の額を手付金として定めた場合、Aが手付金の保全措置を講じていないときは、Bは手付金の支払を拒否することができる。

答え:4

  1. 誤り:契約自体が無効になるのではなく10分の2を超える部分について無効になります。
  2. 誤り:未完成物件なので手付金等寄託契約を締結することはできません。
  3. 誤り:承諾を得たとしても10分の2を超える額の手付金は受領できません。
  4. 正しい
令和3年10月 問39(クーリングオフ)

宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者Bの媒介により、 宅地建物取引業者ではないCを買主とするマンションの売買契約を締結した場合における宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフについて告げるときに交付すべき書面(以下この問において「告知書面」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 告知書面には、クーリング・オフによる買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除があったときは、Aは、その買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができないことを記載しなければならない。
  2. 告知書面には、クーリング・オフについて告げられた日から起算して8日を経過するまでの間は、Cが当該マンションの引渡しを受け又は代金の全部を支払った場合を除き、書面によりクーリング・オフによる買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行うことができることを記載しなければならない。
  3. 告知書面には、Cがクーリング・オフによる売買契約の解除をするときは、その旨を記載した書面がAに到達した時点で、その効力が発生することを記載しなければならない。
  4. 告知書面には、A及びBの商号又は名称及び住所並びに免許証番号を記載しなければならない。

答え:1

  1. 正しい
  2. 誤り:「引き渡しを受け又は代金の全部を支払った場合を除き」というのがいりません。
  3. 誤り:到達したときではなく発したときに効力が発生することを記載しなければなりません。
  4. 誤り:売主の商号、名称などは記載する必要がありますが、媒介業者であるBは不要です。
令和3年10月 問42

宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者ではないBを買主とする土地付建物の売買契約(代金3,200万円)を締結する場合に関する次の記述のうち、民法及び宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 割賦販売の契約を締結し、当該土地付建物を引き渡した場合、Aは、Bから800万円の賦払金の支払を受けるまでに、当該土地付建物に係る所有権の移転登記をしなければならない。
  2. 当該土地付建物の工事の完了前に契約を締結した場合、Aは、宅地建物取引業法第41条に定める手付金等の保全措置を講じなくても手付金100万円、中間金60万円を受領することができる。
  3. 当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を400万円とし、かつ、違約金の額を240万円とする特約を定めた場合、当該特約は無効となる。
  4. 当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を定めていない場合、債務の不履行による損害賠償の請求額は売買代金の額の10分の2を超えてはならない。

答え:2

  1. 誤り:建物を引き渡すまでに移転登記をする必要があります。
  2. 正しい:未完成物件の場合は代金の5%以内かつ1,000万円以下の場合、保全措置を講ずることなく受領することができます。ですので、本件では3,200万×0.05=160万以内なら受領することができます。中間金と合わせても160万円を受領しているのでギリギリ保全措置を講じなくても受領することができます。
  3. 誤り:損害賠償の予定をした場合は売買代金の2割以内の特約なら有効です。ですので、本件では3,200万×0.2=640万以内なので有効です。
  4. 誤り:損害賠償の予定額を定めていない場合は実際に生じた損害額を立証により請求できます。

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