宅建の土地区画整理法の流れをわかりやすく解説。仮換地や保留地についても図解で紹介。

土地区画整理法

※ 文中の灰色の部分はタップやクリックすると答えが見れます。

土地区画整理法は毎年出題される分野です。

そんなに難しくないので、事業の流れをイメージしながら勉強するといいでしょう。

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土地区画整理法とは

土地区画整理のイメージ

土地区画整理法とはその名の通り、道が細くて狭い住宅地を区画整然とした住宅地に作り替える事業です。

土地区画整理事業は、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るために行われるので、都市計画区域の土地について実施されます。

サト
サト

ど田舎の都市計画区域外でわざわざ宅地の利用の増進なんて図らないということです。たぶん。

土地区画整理事業を行う前の宅地を従前の宅地、土地区画整理事業後の宅地を換地といい、きれいに並べ変える処分のことを換地処分といいます。

また、土地区画整理事業は何十年もかかるものも多いので、従前の宅地から換地に移動するまでの間、仮に使用してもらう宅地を仮換地といいます。

言葉の定義を勉強したので次に土地区画整理事業の施行者について詳しく見ていきましょう。

土地区画整理事業の施行者

施行者は以下のように分けられます。

  • 民間施行者
    • 個人施行者
    • 土地区画整理組合
    • 区画整理会社
  • 公的施行者
    • 都道府県・市町村
    • 都市再生機構
    • 国土交通大臣
    • 地方住宅供給公社

個人施行者

個人施行は宅地について所有権を有する者は、1人または数人が共同して事業を行います。

土地区画整理組合

土地区画整理組合は宅地の所有権者または借地権者が7人以上共同して組合を設立して事業を行います。

また、組合は、事業の完成により解散しようとする場合においては、都道府県知事の認可を受けなければなりません

国土交通大臣

国土交通大臣は、急施を要すると認められるものなどについては、自ら施行することができます。

民間施行と公的施行の違い

施行場所都市計画事業市街化調整区域
民間施行都市計画区域内都市計画事業でない場合もある施行できる
公的施行施行区域内必ず都市計画事業として行う施行できない

 施行区域と施行地区の違い

施行区域とは土地区画整理事業が都市計画事業として行われる場合の区域をいいます。

一方、土地区画整理事業を行う区域は施行地区といいます。

違いは施行区域は市街化調整区域に定めることができないという点です。

土地区画整理事業の流れ(組合施行)

土地区画整理事業の流れ

ざっくりと事業の流れを説明すると、まずは事業全体の計画を作ります。

そして、施行者である組合を作って認可をもらいます。

認可をもらったら具体的な換地の計画を立てていき、工事がしやすいように仮換地を指定してみんなに移動してもらいます。

最後に工事が終わったら、きれいになった換地に帰ってきてもらう換地処分を行います。

おおまかにいうとこのような手順で事業は進んでいきます。

では、一つ一つ詳しく見ていきましょう。

事業計画及び定款の策定

宅地の所有者または借地権者が7人以上で共同してまずは、事業計画や定款を策定します。

施行地区内の同意

上記で策定した定款及び事業計画について、施行地区内の所有権者及び借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意を得る必要があります。

組合設立の認可の申請

組合設立の認可は都道府県知事に申請して行います。

そして、申請を受けた知事は、施行地区を管轄する市町村に対して事業計画を2週間公衆の縦覧に供させます。

組合設立の認可

都道府県知事が認可することで組合が成立します。

組合が成立すると施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員となります。

換地計画の策定

換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならず、これを換地照応の原則といいます。

換地計画を定める場合の土地区画整理組合の総会の会議は、定款に特別な定めがある場合を除くほか、組合員の半数以上が出席しなければ開くことができず、過半数で決議されます。

公的施行の場合は事業ごとに土地区画整理審議会が設置されその意見を聞く必要があります。

個人施行者以外の施行者は、換地計画を定めようとする場合においては、政令で定めるところにより、その換地計画を2週間公衆の縦覧に供しなければなりません。

換地計画の認可

換地計画は当該施行者が国土交通大臣・都道府県以外のときは、その換地計画について都道府県知事認可を受けなければなりません。

仮換地の指定

土地区画整理事業は長い期間かかるので、従前の宅地からいきなり換地に移動するのではなく、従前の宅地から一度仮換地に移動を行い、その間に工事などをしていきます。

サト
サト

新しい家を建てる間だけ、仮の賃貸住宅に住むみたいなイメージです。

仮換地の指定は、仮換地の所有者及び従前の宅地の所有者に対し、仮換地の位置及び地積並びに仮換地の指定の効力発生の日を通知して行います。

また、仮換地を指定する際には施行者により以下のような同意を取る必要があります。

仮換地を指定する際に必要な同意など

施行者事由
個人施行者従前の宅地の所有者の同意、仮換地となるべき宅地の所有者の同意などが必要
土地区画整理組合総会等の同意が必要
区画整理会社施行地区内の所有権者及び借地権者の各3分の2以上の同意が必要
公的施行者土地区画整理審議会の意見を聞く

仮換地指定の効果

仮換地指定の効果

原則として、仮換地の指定の効果が生じたときから換地処分の公告の日までAさんは従前の宅地である甲地を使用することができず、換地処分の公告の日まで施行者が管理します。

Aさんの使用収益権は仮換地の指定により乙地に移動しますが、担保の設定、売却などの処分権は甲地に残ったままになります。

施行者は、仮換地を指定した場合において、従前の宅地に存する建築物を移転し、又は除却することが必要となったときは、そのような行為をすることができます。

土地区画整理事業の施行者は、仮換地を指定した場合において、特別の事情がある場合には当該仮換地について使用又は収益を開始することができる日を当該仮換地の効力発生の日と別の日として定めることができます。

また、換地処分を行う前において、換地計画に基づき換地処分を行うため必要がある場合においては、施行地区内の宅地について仮換地を指定することができます。

換地処分

原則

換地処分は換地計画に係る区域の全部について、工事が完了した後に遅滞なく行います。

例外

定款などで別段の定めがある場合は、工事の完了前でも換地処分を行うことができます。

換地処分は、施行者が換地計画において定められた事項を関係者に通知(×公告)して行うものとする。

換地処分の効果

換地処分の公告があった場合においては、換地計画において定められた換地は、その公告があった日の翌日から従前の宅地とみなされ、換地計画において換地を定めなかった従前の宅地について存する権利は、その公告があった日が終了した時において消滅する。

土地区画整理事業によって設置された公共施設は、規約等に別段の定めのない限り、換地処分の公告のあった日の翌日から市町村が管理することになります。

公共施設の用に供する土地は、公共施設を管理すべき者に帰属するので注意してください。

換地処分があった旨の公告がされた日(×仮換地の指定された日)以後、土地区画整理事業の施行による施行地区内の土地及び建物の変動に係る登記がされるまでの間は、登記の申請人が確定日付のある書類によりその指定前に登記原因が生じたことを証明した場合を除き、施行地区内の土地及び建物に関しては他の登記をすることができない。

また、施行者は、換地処分の公告があつた場合においては、清算金を徴収し、又は交付しなければなりません。

保留地について

保留地

換地計画において定められた保留地は、換地処分があった旨の公告があった日の翌日において、施行者が取得し、売却することで事業の費用などに充てられます。

事業計画などの認可などの公告から換地処分の公告までの間に土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更を行おうとする者は都道府県知事の許可を受けなければなりません。

国土交通大臣が行う区画整理事業の場合は国土交通大臣の許可を受ける必要があります。

土地区画整理法に関する宅建過去問

令和4年12月 問20

土地区画整理法(以下この問において「法」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業に係る施行地区内の宅地について借地権のみを有する者は、その土地区画整理組合の組合員とはならない。
  2. 法において、「公共施設」とは、道路、公園、広場、河川その他政令で定める公共の用に供する施設をいう。
  3. 施行者は、換地処分の公告があった場合においては、直ちに、その旨を換地計画に係る区域を管轄する登記所に通知しなければならない。
  4. 市町村が施行する土地区画整理事業では、事業ごとに、市町村に土地区画整理審議会が設置され、換地計画、仮換地の指定及び減価補償金の交付に関する事項について法に定める権限を行使する。

答え:1

  1. 誤り:組合が成立すると施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員となります。
  2. 正しい
  3. 正しい
  4. 正しい
令和3年10月 問20

土地区画整理法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 換地計画において参加組合員に対して与えるべきものとして定められた宅地は、換地処分の公告があった日の翌日において、当該宅地の所有者となるべきものとして換地計画において定められた参加組合員が取得する。
  2. 換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない。
  3. 土地区画整理組合の設立の認可の公告があった日後、換地処分の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更を行おうとする者は、当該土地区画整理組合の許可を受けなければならない。
  4. 土地区画整理組合の組合員は、組合員の3分の1以上の連署をもって、その代表者から理由を記載した書面を土地区画整理組合に提出して、理事又は監事の解任を請求することができる。

答え:3

  1. 正しい
  2. 正しい:換地照応の原則といいます。
  3. 誤り:許可を与えるのは土地区画整理組合ではなく、都道府県知事です。
  4. 正しい

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