契約の基本と制限行為能力者制度を宅建に合格するためにわかりやすく解説!

契約と制限能力者

※ 文中の灰色の部分はタップやクリックすると答えが見れます。

契約の基本と制限行為能力は過去5年間で1問だけ出題されており、出題頻度は少なくなっています。

最近出題されていないのでそろそろ出題されそうですが。。。

最初に学ぶ契約の基本と用語は基本的なことなので、債権者とか債務者とか用語の意味がわかる人は飛ばしてもいいかもしれません。

制限行為能力者はどういう法律行為をした場合、無効になるのか、保護者が同意していた場合どうなるのかなどを重点的に勉強するといいでしょう。

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契約の基本と用語

土地を売りたい人と土地を買いたい人が契約をするとします。

この場合、いつの時点で契約が成立するのでしょうか?

下の例では土地を売りたい犬と土地を買いたいカエルが話をしています。

売主
売主

土地を売りたい!

買主
買主

その土地買いますよ!

契約の成立は、売主と買主の意思表示が一致したときです。これを諾成契約といいます。

普通、契約書にハンコを押すと契約成立のような気がしますが、民法的には意思表示が一致するだけでいいんです。

サト
サト

常識とちょっと違うので覚えておきましょう。

また、意思能力がない重度の認知症の人や泥酔した人がした契約は無効になります。

契約の権利と義務

また、契約をすると双方に権利と義務が生じます。

上の図で説明すると犬が売主、カエルが買主として土地の売買契約をしました。

売主の犬は「土地を引き渡す義務」と「代金を受け取る権利」、買主のカエルは逆に「土地を受け取る権利」と「代金を支払う義務」を負います。

契約を難しく言うとこんな感じですが、常識的にわかりますよね。

また、権利のことを債権、義務のことを債務、権利を持っている人のことを債権者、義務を負っている人のことを債務者といいます。

売主の犬は、土地に関しては債務者ですが、代金については債権者というわけです。

制限行為能力者制度

民法は普通の人には権利能力・意思能力・行為能力の3つの能力があるとしています。 

制限行為能力者の定義
  • 権利能力とは民法上の権利の主体となる能力のこと。生きている間は権利能力が認められています。
  • 行為能力とは自分で行った法律行為に対して法的責任を負う能力のこと。
  • 意思能力とは自分で判断して選択し、法的責任を負うことができる能力のこと。

普通の人は、上記3つの能力を有しているので、契約をすれば有効に成立します。

しかし、3つの能力のうち、行為能力を欠いている人については、一定の保護をする制度が設けられています。(意思能力がない、重度の認知症者などがした契約は無効になります。)

それが、以下で勉強する未成年者保護制度と成年後見制度です。

まずは未成年者保護制度から見ていきましょう。

サト
サト

未成年者や認知症の人が契約内容をよくわかってないのに、借金を背負わされたらかわいそうですよね。

無効と取り消しの違い

無効と取り消しは意味的には同じような感じですが、民法では明確に異なっています。

無効は初めから契約の効果がないことをいいます。

一方、取り消しは契約は一応有効で、取り消しの意思表示をすることで初めから契約がなかったことになります。

無効と取り消しは今後よく出てくるので違いを意識して覚えましょう。

ちなみに、取り消すことができる契約を後からOKと事後承諾することを追認といい、契約は確定的に有効になります。

未成年者保護制度

未成年者保護制度

未成年者について民法では以下のように規定しています。

未成年とは20歳未満の人(結婚している場合は成年として扱われます。結婚する時、原則父母両方の同意が必要だが、同意してくれないときは父または母のいずれか一方で足りる。)

サト
サト

未成年の定義は意外とよく出題されているよ。

法律行為の効果は?

原則

未成年者が単独で契約を行った場合、取り消しすることができます。

例外

以下の場合は未成年者が単独で契約しても取り消しできません。

  • 単に権利を得、又は義務を免れる法律行為
  • 婚姻経験がある場合
  • 法定代理人から許された営業に関する契約である場合
  • 成年者であると詐術した場合
  • 契約を追認した場合
  • 取消権が時効になっている場合

成年後見制度

成年後見制度

成年後見制度では保護する対象を成年被後見人、被保佐人、被補助人の3つの段階にわけています。

↓ 定義はこれです。

  • 成年被後見人・・・精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるもの
  • 被保佐人・・・精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であるもの
  • 被補助人・・・精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分であるもの

成年被後見人が民法で一番強く守られており、被補助人になるにつれて守られている範囲が狭くなっていきます。

それぞれの法的に守られている範囲を意識して勉強していきましょう。

成年被後見人の法律行為

取り消すことができない行為

日用品の購入など日常生活に関する行為

保護者の同意が必要な行為

日常生活に関する行為以外は、後見人の同意が必要だが、後見人が同意している場合でも取り消しできます

成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

被保佐人の法律行為

取り消すことができない行為

保佐人の同意が必要とされる行為以外は取り消すことができません。

例えば、日用品の購入などです。

取り消すことができる行為

重要な財産上の行為については保佐人の同意が必要。

  • 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
  • 贈与の申込を拒絶する場合
  • 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
  • 上記の行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること。

同意を得ずに行った行為は取り消すことできる。(同意していた場合は取り消しできない。)

被補助人の法律行為

被補助人は、上記重要な財産上の行為のうち、家庭裁判所が審判で指定した行為に限り補助人の同意が必要です。

取り消すことができない場合

  • 催告しても確答がない場合
  • 法定追認(全部または一部の履行などをした場合)
  • 詐術さじゅつを用いた場合
  • 取消権の消滅時効

制限行為能力者だからと言ってなんでもかんでも法律で保護されるわけではありません。

制限行為能力者が保護されない場合として上記の4つがあります。

ここでは、過去に出題実績がある詐術を用いた場合を見ていきます。

詐術さじゅつとは「相手をだます行為」のことをいいます。

例えば、

幼稚園児
幼稚園児

ぼく、38さいだから150万円かしてください!

こんな幼稚園児と契約することはないと思いますが、未成年であることを偽って契約すると制限行為能力であることを理由に契約を取り消しすることができなくなります

民法は法律なので当たり前ですが、悪い心を持っている人は保護されにくくできています。

制限行為能力者制度に関する過去問一問一答YouTube

契約の基本に関する宅建過去問

令和3年12月 問8

AはBに対して、Aが所有する甲土地を1,000万円で売却したい旨の申込みを郵便で令和4年7月1日に発信した(以下この問において「本件申込み」という。)が、本件申込みがBに到達する前にAが死亡した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Bが承諾の通知を発する前に、BがAの死亡を知ったとしても、本件申込みは効力を失わない。
  2. Aが、本件申込みにおいて、自己が死亡した場合には申込みの効力を失う旨の意思表示をしていたときには、BがAの死亡を知らないとしても本件申込みは効力を失う。
  3. 本件申込みが効力を失わない場合、本件申込みに承諾をなすべき期間及び撤回をする権利についての記載がなかったときは、Aの相続人は、本件申込みをいつでも撤回することができる。
  4. 本件申込みが効力を失わない場合、Bが承諾の意思表示を発信した時点で甲土地の売買契約が成立する。

答え:2

  1. 誤り:申込者が申込みの通知を発した後に死亡した場合において、相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。(民法526条)
  2. 正しい:申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。(民法526条)
  3. 誤り:承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。(民法525条1項)
  4. 誤り:意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。(民法97条1項)

制限行為の能力者制度に関する宅建過去問

令和3年12月 問3

成年後見人が、成年被後見人を代理して行う次に掲げる法律行為のうち、民法の規定によれば、家庭裁判所の許可を得なければ代理して行うことができないものはどれか。

  1. 成年被後見人が所有する乗用車の第三者への売却
  2. 成年被後見人が所有する成年被後見人の居住の用に供する建物への第三者の抵当権の設定
  3. 成年被後見人が所有するオフィスビルへの第三者の抵当権の設定
  4. 成年被後見人が所有する倉庫についての第三者との賃貸借契約の解除

答え:2

成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません

それに当てはめると以下の通りになります。

  1. できる:居住用の土地建物ではないのでOK
  2. できない:居住用の土地建物なので抵当権の設定には家庭裁判所の許可が必要です。
  3. できる:居住用の土地建物ではないのでOK
  4. できる:居住用の土地建物ではないのでOK
令和3年10月 問5

次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 令和3年4月1日において18歳の者は成年であるので、その時点で、携帯電話サービスの契約や不動産の賃貸借契約を1人で締結することができる。
  2. 養育費は、子供が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない期間を対象として支払われるものであるから、子供が成年に達したときは、当然に養育費の支払義務が終了する。
  3. 営業を許された未成年者が、その営業に関するか否かにかかわらず、第三者から法定代理人の同意なく負担付贈与を受けた場合には、法定代理人は当該行為を取り消すことができない。
  4. 意思能力を有しないときに行った不動産の売買契約は、後見開始の審判を受けているか否かにかかわらず効力を有しない。

答え:4

  1. 誤り:未成年は一人で契約を締結することはできません。
  2. 誤り:子の監護に要する費用つまり養育費は父母の協議によって定められます。ですので、子供が成年に達したからといって当然に養育費の支払義務が終わるわけではありません。
  3. 誤り:負担付贈与は単に権利を得、義務を免れる行為ではないので、法定代理人の同意なく受けた場合は取り消すことができます。
  4. 正しい

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