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債務不履行と解除は過去5年間で2回ほどしか出題されておらず出題頻度はあまり高くありません。
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売買契約における債権と債務

例えば土地の売買契約をした場合、売主と買主はそれぞれ上の図のような権利と義務を有します。
この関係のことを同時履行の関係といい、売主は代金を払ってくれないと土地を引き渡さないよ!と主張することができます。
まぁ、当たり前の話ですが。このことを法律用語では同時履行の抗弁権といいます。
同時履行の関係の成立・不成立については以下のようなものがあります。
けっこう出題されるのでまとめて覚えておきましょう。
同時履行の関係あり
- 契約の解除による原状回復義務
- 請負契約の目的物引渡債務と報酬支払債務
同時履行の関係なし
- 敷金返還債務と建物の明け渡し債務
- 造作買取請求権が行使された場合の建物明渡義務と代金支払義務
債務不履行
債務不履行の種類と効果
債務を履行しない、例えば商品を買ったのにお金を払ってくれない。
これを債務不履行といい、以下の3種類があります。
債務不履行の種類
- 履行遅滞
- 履行不能
- 不完全履行
これらの債務不履行をすると、その結果として相手方は
- 損害賠償の請求(債務者の帰責事由が必要)
- 契約の解除(債務者の帰責事由が不要)
を主張できます。

債務不履行してんじゃないよ~!!
履行遅滞

約束期日過ぎてるよ!早くお金払えよ!バカヤロー。

支払いするのを忘れてました。ケロケロ・・・
二人の会話のように履行遅滞とは決められた時期に債務を履行しないことをいいます。
履行遅滞の成立要件
- 履行が可能にもかかわらず履行する期日に履行しないこと
- 同時履行の抗弁権がないこと
履行遅滞の効果
履行遅滞になると、損害賠償か解除を請求できます。
ただし、債務不履行の程度が契約の内容、社会通念に照らして軽微なときは契約を解除できません。
履行不能

商品を早く引き渡せよ!バカヤロー

商品が燃えてしまって・・・渡せません!!
履行期日に商品が燃えるなどして債務が履行できなくなることを履行不能といいます。
履行不能成立要件
- 契約時に履行可能であったものが不可能になること
履行不能の効果
履行不能の場合も損害賠償請求か契約の解除をできます。
履行不能の場合、相手に催告しても債務の履行をできないのでただちに契約を解除できます。
(履行遅滞の場合は、催告のうえ解除。)
損害賠償の請求
債権者は、債務の不履行によって通常生ずべき損害のうち、通常生ずべき損害の賠償を請求できます。(× 契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたものに限り、賠償請求できる。)
債権者は、特別の事情によって生じた損害のうち、契約締結当時、両当事者がその事情を予見していたもの及び予見すべきであったものについて賠償請求できる。
債務の不履行に関して債権者に過失があったとき裁判所は、損害賠償の責任及びその額を定めるに当たり、債権者の過失を職権で考慮することができます。
債務者からの主張の有無は問われません。
金銭債務の特則
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定めます。
ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。法定利率は年3%で3年に一回見直しされます。
契約の解除
履行遅滞による解除・・・相当の期間を定めて債務の履行を催告し、その期間内に債務の履行がないときは契約を解除できる。
※ 期間を定めずにした催告や定めた期間が不当に短かった催告でも無効とはならず、相当の期間経過後、解除権が生じます。
履行不能による解除・・・直ちに契約を解除できる。
契約解除の効果
契約が解除された場合、当事者は契約前の状態に戻す義務を負います。(原状回復義務)
貸駐車場の売買契約をし引き渡しを受けていた場合、契約を解除するまでにもらった収益についても返す必要があります。
契約締結後、原状回復義務履行時までの間に、土地価格などが下落し損害を被った場合には、契約の解除だけでなく損害賠償請求も可能。
契約の解除と第三者
解除と第三者は第三者が解除の前に現れたのか後に現れたのかでかわってきます。
解除前に第三者が現れた場合

契約を解除する前に現れた第三者が登記を備えていた場合は契約の解除を対抗できない。
第三者が登記をしてなければ契約の解除を対抗できる。
解除後に第三者が現れた場合

契約解除後に現れた第三者に対しては自分に登記があれば対抗できる。(先に登記したほうが勝つ)