物権変動をわかりやすく解説。原則第三者に対抗するには登記が必要!

物権変動

※ 文中の灰色の部分はタップやクリックすると答えが見れます。

物権変動は過去5年間で1回だけ出題されています。

物権変動は宅建ではあまり出題されませんが、重要な分野なので勉強しておきましょう。

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物権変動とは?

民法では権利を物権債権の二つにわけて規定しています。

債権とはある者が特定の者に対して一定の行為を要求する権利のことです。

貸金債権が代表例ですね。

貸金債権は債務者に対してお金を払うことを要求する権利です。

一方、今回勉強する物権とは物に対する権利のことです。

こちらは所有権が代表例です。

売買などで所有権が変動することを物権変動といいますが、1つのものを二人の人に売ってしまった場合はどうなるのでしょうか?

下の例でみてみましょう。

物権変動

この例では、売主のゾウさんが二人のカエル君に家を売っています。

民法は意思主義を採用しているので、売主と買主の意思表示によって有効に契約が成立します。

ですので、どちらのカエル君に所有権を取得して自分のものだと主張できるのですが、二人とも所有権を持っているのでお互い主張しあうだけで結論がでません。

そこで、民法は登記を持っている人が第三者に自分の所有権を主張できるとしました。

この主張できるというのを対抗できると法律用語ではいいます。

第三者とは?

第三者とは「当事者及び包括承継人以外の者で、不動産の物権変動について登記の不存在を主張するにつき正当な利益を有する者をいう」と民法で規定されています。

上の図でいうとカエル君が第三者にあたります。

第三者に対して権利を主張するには登記が必要ですが、そもそも第三者に当たらず登記がなくても権利が主張できる場合があります。

その一例としてここでは背信的悪意者をみていきましょう。

問題

売主AがBに対して甲土地を売却し、Bは登記をせずにいました。Bが登記をしていないことを知ったCはいやがらせ目的でAから甲土地を取得し、登記を備えました。

CはBに対して権利を主張できるか?

CはBが登記をしていないことを知っていました。つまり悪意だったわけですが、単なる悪意の場合は登記を備えていれば権利を主張できます。

しかし、Cは単なる悪意を超えてBを害する目的で契約をしています。このような人を背信的悪意者といいます。

背信的悪意者は登記を備えていても自己の権利を主張できません。ですので、設問でいうとCはBに対して権利を主張できません。

また、背信的悪意者かどうかは個人ごとに判断するため、背信的悪意者Cから権利を取得したDさんがいて、背信的悪者でない場合、Bに対して権利を主張できます。

背信的悪意者以外にも、無権利者不法占拠者などに対しては登記なくして自己の権利を主張できます。

登記がないと対抗できない第三者

登記がないと対抗できない第三者として以下のものがあります。

  • 取消の第三者
  • 時効完成の第三者
  • 解除前後の第三者

※ 解除は登記、登記どちらに対しても登記が必要なので注意してください!

※ 取消前の第三者については詐欺のところなどを、時効完成前については時効の記事をみてください。

ここでは、取消後の第三者についてみていきましょう。

問題

ゾウさんはカエル君と土地の売買をしましたが、ゾウさんはカエル君の詐欺を理由として契約を取り消しました。しかし、その後カエル君は犬に土地を売却してしまいました。

ゾウさんは取り消しの効果を犬に主張できるのでしょうか?

犬が登場したのは、ゾウさんが取消をした後なので、犬は取消後の第三者になります。

そして、売買契約を取り消すことによりカエル君からゾウさんへの所有権の復帰的変動とカエル君から犬への売買という二重譲渡に類似した関係になります。

よって、ゾウさんが物件を犬から取り返すには登記が必要になります。

時効完成後の場合も同様に登記があれば権利を主張できます。

解除については解除前も解除後も第三者に対抗するためには登記が必要です。

解除後については先ほどの詐欺による取消の場合と同様に考えます。

解除前についてはこのように考えます。

ゾウさんの解除により契約は遡及的に無効となりますが、545条1項但書では第三者の権利を害することはできないとされています。しかし、権利を保護する要件として第三者に登記を要求しています。

第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

物権変動に関する宅建過去問

令和3年12月 問9

AがBに対してA所有の甲建物を令和4年7月1日に①売却した場合と②賃貸した場合についての次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. ①と②の契約が解除された場合、①ではBは甲建物を使用収益した利益をAに償還する必要があるのに対し、②では将来に向かって解除の効力が生じるのでAは解除までの期間の賃料をBに返還する必要はない。
  2. ①ではBはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができ、②ではBはAの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。
  3. 甲建物をDが不法占拠している場合、①ではBは甲建物の所有権移転登記を備えていなければ所有権をDに対抗できず、②ではBは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をDに対抗することができる。
  4. ①と②の契約締結後、甲建物の引渡し前に、甲建物がEの放火によって全焼した場合、①ではBはAに対する売買代金の支払を拒むことができ、②ではBとAとの間の賃貸借契約は終了する。

答え:3

  1. 正しい:①については、契約が解除された場合原状回復義務が生じるので、買主は、引き渡しを受けた時以降に生じた賃料や使用利益も返還しなければなりません。また、売主は、代金を受け取っていた時は、受領の時からの利息をつけて返還しなければなりません。②については賃貸借契約の解除は将来に向かって生じるので賃料を返還する必要はありません。(民法620条)
  2. 正しい:①については、Bは購入しているので自由にCに賃貸できます。②についてはその通りです。(民法612条1項)
  3. 誤り:①・②ともに不法占拠者は177条の第三者に該当しないので登記無くして権利を主張できます。
  4. 正しい
令和3年12月 問6

不動産に関する物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 不動産の所有権がAからB、BからC、CからDと転々譲渡された場合、Aは、Dと対抗関係にある第三者に該当する。
  2. 土地の賃借人として当該土地上にある登記ある建物を所有する者は、当該土地の所有権を新たに取得した者と対抗関係にある第三者に該当する。
  3. 第三者のなした登記後に時効が完成して不動産の所有権を取得した者は、当該第三者に対して、登記を備えなくても、時効取得をもって対抗することができる。
  4. 共同相続財産につき、相続人の一人から相続財産に属する不動産につき所有権の全部の譲渡を受けて移転登記を備えた第三者に対して、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。

答え:1

  1. 誤り:不動産が転々と譲渡された場合の前主(最判昭39.2.13)との関係では第三者に該当しません。
  2. 正しい:賃貸不動産が譲渡された場合の対抗要件を備えた賃借人(最判昭49.3.19)は第三者に該当します。
  3. 正しい:時効完成前の第三者に対しては登記がなくても時効取得を主張できます。
  4. 正しい:相続分を超える部分に関しては無権利者の登記であり、登記に公信力がない以上、第三者は権利を取得できないから、他の相続人は登記なくして自己の相続分を主張できる(最判昭38.2.22)。

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