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代理は過去5年間4回出題されており比較的出題頻度の高い分野と言えます。
難しいところはないので出題されれば確実に得点したいところです。
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代理ってなに?

Aは土地を売却したいと思っていますが、高齢のためよくわかりません。
そこで、土地の売却をBに依頼し、代理人BはCと土地の売買契約を結びました。
このとき、代理人Bが行った売買契約の効果がAに帰属する仕組みのことを代理と言います。
売買行為を行ったのはBですが、Bは代理人なので、土地の引き渡し義務などはAが負うことになります。
代理の要件
代理行為が本人に効果帰属するためには次の3つの条件を満たす必要があります。
- 代理権があること
- 代理人であることを示すこと(顕名)
- 代理権の範囲内の代理行為であること
②がない場合、効果は代理人に効果が帰属します。
ただし、相手方が悪意又は有過失の場合は本人に効果帰属します。
代理権の種類と消滅、濫用
代理権の種類
- 任意代理・・・本人から代理権を与えられた場合
- 法定代理・・・法律の規定で代理権を与えられた場合
制限行為能力者が任意代理人として行った行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができません。
ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については取り消すことができます。頻出
代理権の消滅
代理権は本人または代理人が以下の事由に該当した場合に消滅します。
違いを理解して覚えておきましょう。
本人 | 死亡 | 破産 | 後見開始 |
---|---|---|---|
任意代理 | 〇 | 〇 | × |
法定代理 | 〇 | × | × |
代理人 | 死亡 | 破産 | 後見開始 |
---|---|---|---|
任意代理 | 〇 | 〇 | 〇 |
法定代理 | 〇 | 〇 | 〇 |
※ 本人の破産以外は代理権は自動的に消滅する。
上の表の理解の仕方
法定代理人がいて本人が破産した場合は法定代理人にお金が払えなくなるので代理権は消滅します。
本人が後見開始の審判を受けたとしても、代理人がしっかりやってくれれば大丈夫なので代理権は消滅しません。
代理権の濫用
代理人が代理権の範囲内の行為を行ってはいるのですが、自己または第三者の利益を図る目的で行う代理行為を代理権の濫用といいます。
代理権の濫用の場合、相手方が悪意または有過失の場合、その行為は無権代理行為とみなされます。
無権代理行為(自己契約と双方代理、利益相反行為)
自己契約と双方代理

Aから土地の売却を依頼された代理人Bは土地がどうしても欲しかったから自分名義でAと土地の売買契約を結んでしまいました。
このように代理人であると同時に契約の相手方にもなることを自己契約と言います。

Bは土地を売りたいAと土地を買いたいCの双方の代理になり売買契約を締結しました。(双方代理)
この場合、契約の効果はAC間に帰属するのでしょうか?
自己契約も双方代理も以下の通り法律効果は同じです。
原則
無権代理行為となり本人に効果帰属しない。
例外
以下の場合、代理行為は有効となり効果が本人に帰属する。
- 本人・当事者があらかじめ許諾していた場合
- 決まったことをするだけの債務の履行の場合
利益相反行為
代理人には利益なるが、本人には不利益になるような代理行為も自己契約・双方代理とほぼ同じです。
原則
無権代理行為となり本人に効果帰属しない。
例外
本人があらかじめ許諾していた場合代理行為は有効となり効果が本人に帰属する。
無権代理とは?

代理の要件は、
- 代理権があること
- 代理人であることを示すこと(顕名)
- 代理権の範囲内の代理行為であること
でしたよね。無権代理とはこのうち①がない代理行為のことをいいます。
代理権もないなのに勝手に代理人として法律行為をしてしまった場合、どのような効果が生じるのでしょうか?
原則
本人に効果は帰属しない
例外
本人が無権代理行為を追認すると契約の時に遡って効果が生じます。頻出
相手方保護
民法は不幸にも無権代理行為の相手方になってしまったCに4つの対抗策を与えています。
催告権
相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。
この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされます。
取消権
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができます。
ただし、契約の時に相手方が悪意の時は取り消すことができません。
無権代理人への責任追及
無権代理人に、履行の請求または損害賠償を請求することができる。
ただし、以下の場合は無権代理人に責任追及できません。
- 代理人が自己の代理権を証明したとき
- 本人が追認したときは
- 相手方が悪意
- 相手方が有過失
- 代理人が制限行為能力者
表見代理
無権代理人に代理権が存在するかのような外観を呈しているような事情があると認められる場合に、その外観を信頼した相手方を保護するため、有権代理と同様の法律上の効果を認める制度を表見代理制度といいます。
- 代理権授与表示による表見代理(例 委任状をもたせた)
- 権限外の行為の表見代理(例 甲土地売却の代理権を持たせたのに乙土地を売却した)
- 代理権消滅後の表見代理(例 以前は代理人だった)
上のような事情がある場合に相手方が善意無過失なら契約は有効に成立。
復代理
土地の売却の依頼を依頼されたBが、忙しいので自分のためにDと代理契約を結んだ場合を復代理といいます。簡単に言うと代理人がさらに代理人に依頼することですね。
復代理は任意代理の場合と法定代理の場合にわけて考えます。
任意代理の場合
原則復代理人を選任できない。(ただし、本人が許諾している場合ややむを得ない事由がある場合は専任できる。)

任意代理の場合、その人に依頼内容をしてほしいから代理権を与えているので原則復代理人は選任できません。
法定代理の場合
復代理人の選任をできる。
よく出題される無権代理の判例 頻出

よく出題されている判例について最後にみていきましょう。
無権代理人BがCと売買契約を締結し、その後本人Aが死亡して、無権代理人Bが本人Aを単独で相続した場合、無権代理人は、信義則上追認を拒絶できません。
Bは無権代理行為をした本人なんだから、Aを相続したからと言って追認を拒絶するのは身勝手ですよね。

今度は逆に無権代理人Bが死亡した後に本人Aが無権代理人Bを単独で相続した場合、本人Aは追認を拒絶できます。
代理に関する過去問一問一答YouTube
代理に関する宅建過去問
AがBの代理人として行った行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、いずれの行為もBの追認はないものとし、令和4年7月1日以降になされたものとする。
- AがBの代理人として第三者の便益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方Cがその目的を知っていたとしても、AC間の法律行為の効果はBに帰属する。
- BがAに代理権を与えていないにもかかわらず代理権を与えた旨をCに表示し、Aが当該代理権の範囲内の行為をした場合、CがAに代理権がないことを知っていたとしても、Bはその責任を負わなければならない。
- AがBから何ら代理権を与えられていないにもかかわらずBの代理人と詐称してCとの間で法律行為をし、CがAにBの代理権があると信じた場合であっても、原則としてその法律行為の効果はBに帰属しない。
- BがAに与えた代理権が消滅した後にAが行った代理権の範囲内の行為について、相手方Cが過失によって代理権消滅の事実を知らなかった場合でも、Bはその責任を負わなければならない。
答え:3
- 誤り:利益相反行為は原則本人に効果帰属しません。
- 誤り:無権代理行為は原則本人に効果帰属しません。
- 正しい
- 誤り:表見代理は相手方が善意無過失ならば契約は有効に成立します。