※ 文中の灰色の部分はタップやクリックすると答えが見れます。
意思表示は宅建試験ではほぼ毎年出題される重要分野です。
図解で説明していきますので、出てくる登場人物に落ち度があるのかどうかを意識すれば常識で解ける問題も多くあるのでがんばって勉強していきましょう。
次の記事 代理
詐欺
当事者間の効果
- カエル君は犬にだまされて土地を売ってしまいました。
この場合、売買契約は有効なのでしょうか? - だまされてしまったカエル君は何も悪くないので契約を取り消すことができます。
だました方とだまされた方、どっちを保護すべきかは常識でわかると思います。
もちろんカエル君を保護すべきですよね。
第三者に対する効果
- 犬はカエル君をだまして土地を購入することに成功しました。
そして、そのあと善意無過失のゾウさんに土地を売却してしまいました。
だまされたことに気づいたカエル君はゾウさんに契約の取り消しを主張できるのでしょうか? - この場合、善意無過失のゾウさんに対して取り消しの主張はできません。
ゾウさんは、詐欺について善意無過失なのでなんの落ち度もありません。
一方、カエル君はだまされてしまったという、ちょっとした落ち度があります。
ですので、民法はより落ち度のないゾウさんを保護しています。
ただし、ゾウさんは善意無過失でないといけません。
詐欺について知っていた又は知ることができた場合は悪いゾウなので保護されません。
善意・悪意というのは法律用語で、善意はある事実を知らなかったということ、悪意はある事実を知っていたということだよ。
第三者による詐欺の効果
- カエル君は第三者のアヒルさんにだまされて犬に土地を売ってしまいました。
この場合、カエル君は犬に対して契約の取り消しを主張できるのでしょうか? - 買主である犬が悪意または有過失の場合、カエル君は契約を取り消すことができます。
犬が悪意または有過失など何らかの落ち度がある場合にカエル君を救ってあげることができます。
ですので、犬が善意かつ無過失などまったく落ち度がない場合はカエル君は保護されません。
強迫
当事者間の効果
- 犬はカエル君を脅して土地を購入しました。
このような契約を取り消しできるのでしょうか? - この場合は、もちろん契約を取り消すことができます。
強迫の場合、カエル君には何の落ち度もないのでカエル君が保護される仕組みになっています。
第三者に対する効果
- 犬はカエル君を脅して土地を購入したあと、善意無過失のゾウさんに土地を売却してしまいました。犬が怖かったカエル君ですが、ゾウさんには契約の取り消しを主張できるのでしょうか?
- カエル君は契約の取り消しを主張できます。脅された被害者は手厚く保護されます。
第三者による強迫の効果
- 第三者のアヒル君に脅されたカエル君は善意無過失の犬に土地を売ってしまいました。
この場合、カエル君は売買契約の取り消しを主張できるのでしょうか? - カエル君は契約の相手方が善意無過失でも契約の取り消しを主張できます。
通謀虚偽表示(グル)
当事者間の効果
- 債権者のアヒルにお金を払わないカエル君は土地を差し押さえられて、売られそうになってしまいました。
土地を売られてしまうのが嫌なカエル君は犬とグルになって差し押さえを免れるために、とりあえず、カエル君の土地を犬に売る契約をしました。
このような契約は有効なのでしょうか? - このような契約は無効です。まぁ、当たり前ですよね。
このような契約が有効とされたら差押え逃れをいくらでもできてしまいます。
通謀虚偽表示なんて日常生活で使うことはありませんが、カエル君と犬がグルになって(通謀)して、見せかけの売買契約(虚偽表示)をしているので通謀虚偽表示といいます。
第三者と転得者に対する効果
- 通謀虚偽表示によって、カエル君は土地を犬に売りました。
そして、犬はゾウさんと、ゾウさんは牛さんとそれぞれ土地を売買しました。
この場合契約は有効なのでしょうか? - 第三者と転得者が出てくるパターンは、少し難しいですが、覚え方としては、第三者が悪意でかつ転得者が悪意の場合だけ保護されないと覚えておきましょう。
もう少し詳しく説明すると、まず第三者が善意の場合この時点で契約の無効を主張できないので、そのような第三者から土地を譲り受けた転得者に対しても契約の無効を主張できません。
通謀虚偽表示における第三者とは?
ここでいう、第三者とは「その表示の目的につき利害関係を有するに至った者」をいいます。
- 仮想売買された土地上の建物を賃借している人は、第三者にあたりません。
- 仮装売買された目的物を差し押さえた債権者は第三者にあたります。
また、悪意の第三者は保護されませんが、そのような第三者から土地を譲り受けた善意の転得者は何も悪くないので保護されます。
字で書くとややこしいですよね。上の図で理解して覚えておいてください。
心裡留保(冗談)
当事者間の効果
- カエル君は本当は売るつもりがないのに、犬に見栄を切って1000円で土地を売ってしまいました。
本当は売るつもりがなかったカエル君は後で契約の無効を主張できるのでしょうか? - 原則カエル君は契約の無効を主張できず、契約は有効となります。
ただし、相手方(犬)が悪意の場合や善意有過失の場合は契約は無効になります。
第三者に対する効果
- カエル君は本当は売るつもりがないのに、犬に見栄を切って1000円で土地を売ってしまいました。
その後、犬は土地を善意のゾウさんに転売しました。
この場合、カエル君はゾウさんに契約の無効を主張できるのでしょうか? - 第三者のゾウさんが善意の場合、契約の無効を主張できません。
つまらない冗談を言ったカエル君も悪いですからね。
錯誤(うっかり) 頻出
当事者間の効果
- うっかりもののカエル君は契約書に2000万円と書くところを2万円と書いて犬と契約してしまいました。
この場合、契約は有効なのでしょうか? - このような、勘違いや書き間違いのことを表示の錯誤といいます。
この場合、原則として法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき契約を取り消すことができます。
また、駅が開業されると思っていて購入したが、実は駅の開業予定なんてない場合(これを動機の錯誤)は動機が黙示または、明示に表示され、法律行為の内容なった時に限り法律行為の内容の錯誤となり取り消すことができます。
勘違いをした人(カエル君)に重大な過失があるとき
原則、カエル君は取り消しを主張できません。
ただし、カエル君に重過失があったとしても、犬が悪意または善意重過失の時は取り消しを主張できます。
また、カエル君に重過失があったとしても、カエル君と犬が同じ勘違いをしていた場合は取り消せます。
表意者が無効を主張できない時は、相手方及び第三者も無効を主張できません。
第三者に対する効果
- うっかりもののカエル君は契約書に2000万円と書くところを2万円と書いて犬と契約してしまいました。
そして、そのあと犬は善意無過失のゾウさんに土地を転売しました。
うっかりものの、カエル君はゾウさんに契約の無効を主張できるのでしょうか? - 善意無過失の第三者には対抗できません。
意思表示のまとめ一覧
相手方 | 第三者 | |
---|---|---|
強迫 | 取り消せる | 取り消せる |
詐欺 | 取り消せる | 善意・無過失だと取り消せない |
錯誤 | 重要なもので重過失がない場合 取り消せる | 善意・無過失だと取り消せない |
通謀虚偽表示 | 無効 | 善意の第三者だと取り消せない |
心裡留保 | 原則:有効 相手が悪意または善意有過失なら無効 | 善意の第三者だと取り消せない |
この表を見ただけでは覚えるのは難しいと思うので、私なりの覚え方を書いていきます。
意思表示において、民法は3つにわけて考えているように思います。
まず、強迫。これは当事者(上の例ではカエル君)にまったく落ち度がない(むしろ被害者)ので、相手方に取り消しを主張できるし、第三者が善意無過失でも取り消しを主張できます。
次に、通謀虚偽表示と心裡留保。これは同じグループになります。
通謀虚偽表示は嘘の売買契約をしているという落ち度、心裡留保は真意を相手に言わずに売買しているという落ち度が本人にあります。
ですので、第三者は善意であれば保護されるわけです。
最後に、詐欺と錯誤。
詐欺はだまされてしまった、錯誤はうっかりしてしまったという落ち度がありますが、本人にはそんなつもりがなく、不注意によりそのような状態になってしまったわけです。
ですので、落ち度は小さく、第三者が保護されるためには善意・無過失まで要求されるわけです。
この表はとても大事なのでしっかり覚えておきましょう。
これだけ分かりやすく説明しているのに分かりにくい問題。ほんと嫌になります