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時効は過去5年間で3回出題されていて、出題頻度としては中程度となっています。
勉強するポイントはそれほど多くないので取り組みやすい分野と言えるでしょう。
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時効の定義と種類
時効には一定期間経過することによって、権利を取得する取得時効と権利が消失する消滅時効の2種類があります。
どちらも、時効が完成するには一定期間経過する必要があり、法が長い間続いた事実状態を尊重したことによる効果として時効が認められています。
取得時効
成立要件
取得時効の成立要件は以下の4つです。
最後の一定期間にわたりというところが一番重要です。
- 所有の意思をもった占有であること
- 平穏・公然とした占有であること
- 他人の物であること
- 占有の態様に応じて要求される一定の期間にわたり占有が継続すること
一定の期間とは占有開始時に善意・無過失なら10年、悪意または有過失なら20年をいいます。
当該期間占有を続ければ時効取得が成立します。
善意・無過失か悪意または有過失かの判断はあくまで占有開始時に行います。
例えば、占有開始時は善意・無過失で途中で悪意になったとしても10年で時効取得できます。
※ 地役権(継続的に行使され、かつ外形上認識できるものに限る。)、賃借権(継続的用益という外形的事実が存在し、賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているとき。)も時効取得の対象になります。
賃借権の時効取得は例えば、Aが自称代理人のBと土地貸借契約を締結し、その土地に建物を建築して、継続的にBに地代を支払った場合があげられます。
判例は地代支払いという事実を重視して、Aが土地賃借権を時効取得することを認めています。
占有の承継
占有の承継については実際例を見ながら勉強します。
- Dが、所有者と称するEから、Eが無権利者であることについて善意無過失で甲土地を買い受け、所有の意思をもって平穏かつ公然に3年間占有した。
そのあと甲土地がAの所有であることを知っているFに売却し、Fが所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を7年間占有した場合、Fは甲土地の所有権を時効取得することができるか? - この場合はFはDの占有期間の3年を承継するので、自分の7年の占有と合わせて10年の占有になります。
また、占有期間だけでなく、善意・無過失、悪意なども引き継ぐのでDの善意無過失をFは引き継ぎ10年で時効取得を主張できます。
消滅時効の成立要件
債権は、以下の場合に、時効によって消滅します。
- 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
- 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。(人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権については20年)
債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅します。
上記でいう、権利を行使できる時というのはいつの時点を言うのかは債権の種類によって決まっています。
消滅時効の起算点の話です。
債権の種類 | 消滅時効の起算点 |
---|---|
確定期限のある債権 | 確定期限到来時 |
不確定期限のある債権 | 不確定期限の到来時 |
期間の定めのない債権 | 債権が成立した時 |
時効の援用
時効が成立したので、時効を主張します!
時効が完成した場合、時効の利益を主張する必要があり、これを「援用」といいます。
どのようなときに時効の援用を主張できるのかみていきましょう。
- 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。
- 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができません。
- 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。
- 債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。
時効の完成猶予と更新
時効の完成猶予
時効の完成猶予とは、以下の事由がある場合に、その事由が終了するまでのあいだ時効が完成しないことをいいます。
- 支払上の請求・支払督促
- 仮差押等
- 催告(例 内容証明郵便による支払請求)
- 協議を行う旨の合意
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6ケ月を経過するまでの間は、時効は完成しません。
時効の更新
裁判上の請求事由の終了や権利の承認があったときにその時から新たに時効が進行することを時効の更新といいます。
時効の更新がされるとそれまで経過していた時効期間はリセットされるよ!
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するもの(調停・和解)によって権利が確定したときは、時効は、事由が終了した時から新たにその進行を始める。
時効の更新は原則として相対効ですが、債務者が、債権者に対し、金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、物上保証人は、当該債務の消滅時効の更新の効力を否定することができません。
※ 訴えの却下又は取下げの場合には、時効の更新の効力を生じない。