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危険負担と契約不適合責任は過去5年間で3回出題されています。
大幅な改正があった分野なので、今後も出題される可能性が高くしっかり勉強しておきましょう。
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危険負担とは?
まず、危険負担とはどういうことなのかの理解から初めていきます。
売主と買主が建物の売買契約を締結した場合、売主は建物引渡債務、買主は代金支払債務を負います。
そして、契約締結後引渡前に地震などの当事者双方の責めに帰すことができない事由により建物が壊れてしまいました。
建物引渡債務はなくなりますが、残ったもう一方の代金支払債務はどうなるのか?
これが危険負担の問題になります。
具体的には、買主は代金を支払う必要があるかどうかです。
これは、当事者双方の責めに帰すことができない事由がいつ起こったかによって結論が変わってきます。
図で説明すると以下のようになります。
売買契約→滅失→引渡の場合
売買契約後、建物の引渡前に当事者双方の責めに帰すことができない事由により建物が滅失した場合は、買主は代金の支払いを拒むことができます。
売買契約→引渡→滅失の場合
建物の引渡後に当事者双方の責めに帰すことができない事由により建物が滅失した場合は、買主は代金の支払いを拒むことができません。
契約不適合責任
売主が契約に適合していないものを履行した場合、買主はどんな主張ができるのでしょうか?
順番にみていきましょう。
契約不適合責任で買主が請求できる権利
追完請求権
追完請求権とは、契約に適合しない履行をされた買主が、追って完全な履行を請求できる権利のことです。
雨漏りの家を引き渡された場合は、雨漏りを直してきちんとした家にしてください!と言える権利です。
追完請求権は、
- 目的物の修補
- 代替物の引き渡し
- 不足分の引き渡し
などを、買主は選択して請求できます。
※売主は買主が選択した方法とは異なる方法で追完できます。
※契約不適合が買主の責めに帰すべき事由のときは買主は追完請求できません。
代金減額請求権
買主が相当の期間を定めて催告したにも関わらず、売主が履行の追完をしてくれない場合には、買主は代金減額請求できます。
以下の場合は、催告しても意味がないので直ちに代金の減額を請求できます。
- 追完が不能の場合
- 売主が追完を拒絶意思を明確にしている場合
- 契約の性質上、特定の日時・一定の期間に履行をしないと目的が達成できないのに、売主が履行の追完をしないでその時期が過ぎた場合。
損害賠償請求権
契約不適合の場合、損害賠償請求もすることができます。
ただし、売主に帰責事由がない場合はできません。
解除権
契約不適合の内容が軽微でなければ、催告したうえで契約を解除することもできます。
契約不適合の種類
種類・品質に関する契約不適合責任
種類・品質に関する契約不適合責任の例としては住宅を購入したが、屋根に穴があいており、雨漏りをする場合などがあります。
この場合に買主は、以下のことを請求できます。
- 追完請求権
- 代金減額請求権
- 損害賠償請求権
- 解除権
※ 上記の請求をするためには不適合を知ったときから1年以内に売主に通知する必要がある。
数量に関する契約不適合責任
数量に関する契約不適合責任の例としては、土地の売買契約書には500㎡と記載してあったのに実際は200㎡しかなかった場合などがあります。
この場合、買主は種類・品質に関する契約不適合責任と同様の請求をすることができます。
担保責任の期間の制限はないので注意してください!
権利に関する契約不適合責任
権利に関する契約不適合責任の例としては、抵当権がないと思って土地を購入したら実は抵当権が付いていた場合や、売買した土地の一部が他人の土地だった場合などがあります。
この場合、買主は種類・品質に関する契約不適合責任と同様の請求をすることができます。
数量に関する契約不適合責任と同様、担保責任の期間の制限はないので注意してください!
売買した土地の一部が他人の土地だった場合は、契約不適合責任の規定が適用されますが、売買した土地の全部が他人の土地だった場合どうなるのでしょうか?
他人の物を勝手に売買しても、契約は有効です。
ですので、売主は目的物を引き渡す義務を負います。
売主が他人から土地を購入して、買主に引き渡しできれば何も問題はありませんが、引き渡しができなかった場合は、債務不履行の規定に従い、損害賠償請求か契約の解除ということになります。
担保責任の期間の制限
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、買主は不適合を知った時から1年以内に売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求などをすることができなくなります。
ただし、売主が悪意または重過失の場合は1年を過ぎていても請求することができます。
また、この1年以内に通知という規定は、種類又は品質に関する契約不適合の場合にのみ適用されるので、外見上瑕疵の存在が明らかな数量や権利に関する不適合責任には適用されず、期間の定めなく請求することができます。
契約不適合責任などに関する宅建過去問
いずれも宅地建物取引業者ではない売主Aと買主Bとの間で令和4年7月1日に締結した売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- BがAに対して手付を交付した場合、Aは、目的物を引き渡すまではいつでも、手付の倍額を現実に提供して売買契約を解除することができる。
- 売買契約の締結と同時に、Aが目的物を買い戻すことができる旨の特約をする場合、買戻しについての期間の合意をしなければ、買戻しの特約自体が無効となる。
- Bが購入した目的物が第三者Cの所有物であり、Aが売買契約締結時点でそのことを知らなかった場合には、Aは損害を賠償せずに売買契約を解除することができる。
- 目的物の引渡しの時点で目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことをAが知っていた場合には、当該不適合に関する請求権が消滅時効にかかっていない限り、BはAの担保責任を追及することができる。
答え:4
- 誤り:目的物を引き渡す前でも代金の一部を支払うなど相手方が履行に着手していれば契約を手付解除できません。
- 誤り:買戻し特約は期間の合意をしなくても特約自体は有効です。
- 誤り:他人物売買は有効ですが、債務を履行できなかった場合は債務不履行による損害賠償責任を負います。
- 正しい
Aを売主、Bを買主として、A所有の甲自動車を50万円で売却する契約(以下この問において「本件契約」という。)が令和3年7月1日に締結された場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- Bが甲自動車の引渡しを受けたが、甲自動車のエンジンに契約の内容に適合しない欠陥があることが判明した場合、BはAに対して、甲自動車の修理を請求することができる。
- Bが甲自動車の引渡しを受けたが、甲自動車に契約の内容に適合しない修理不能な損傷があることが判明した場合、BはAに対して、売買代金の減額を請求することができる。
- Bが引渡しを受けた甲自動車が故障を起こしたときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。
- 甲自動車について、第三者CがA所有ではなくC所有の自動車であると主張しており、B が所有権を取得できないおそれがある場合、Aが相当の担保を供したときを除き、BはAに対して、売買代金の支払を拒絶することができる。
答え:3