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賃貸借契約は宅建では過去5年間で5回出題されており、ほぼ毎年出題される分野となっております。
実務でも重要な分野なのでしっかり勉強していきましょう!
次の記事 借地借家法(借地)
賃貸借契約とは?
賃貸借契約はみなさん馴染み深いと思いますが、賃貸人が建物などを使用収益させる一方、賃借人は賃料を払う契約のことを言います。
賃借人がさらに、建物などを貸した場合、貸した相手方のことを転借人といいます。
賃貸借契約は、賃貸人・賃借人にそれぞれ義務があるのでそこから見ていきましょう。
賃貸人の義務
目的物を使用収益させる義務
当たり前ですが、賃貸人は目的物を賃借人のために使用収益させる義務が生じます。
宅建では出題されないので、深入りはしません。
目的物修繕義務
賃貸人は賃借人のために目的物を適正に保つ義務があり、使用収益ができなくなったとき、賃借人は賃料の一部の支払いを拒絶することができます。
また、賃貸人が行う保存に必要な修繕行為について賃借人は拒むことはできません。
費用償還義務
ここでいう、費用とは必要費と有益費にわけられ、
必要費とは建物を維持保存し又は賃借人が使用収益をするために必要な費用のことを言います。
有益費とは建物の価値を高めるために支出した費用のことをいいます。
必要費は、直ちに全額支払う必要があります。
有益費は、賃貸借契約の終了時に、支出額または価値の増加額のどちらかを賃貸人の選択に従って支払う必要があります。
賃借人の義務
賃料支払義務
賃借人は使用収益させてもらっているかわりとして賃料を支払う義務を負います。
特約がなければ当月末日までに当月分を支払う必要があります。(後払いということ)
目的物返還義務 頻出
賃借人は賃貸借契約が終了したとき、賃貸人に元の状態で返す義務を負います。
これを原状回復義務といいます。
しかし、以下の2点の場合には原状回復義務を負いません。
- 通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに賃借物の経年変化
- 賃借人の責めに帰することができない事由によるもの
転借人の義務
転借人の義務で出題されるのは、賃借人が月10万円で借りていて、転借人が月15万円で借りている場合、転借人が賃貸人に対して直接義務を負うのは賃借料と転借料のうち小さい方の金額の範囲を限度として負うという点です。
上の例では、転借人が賃貸人に対して負う義務は10万円となります。
この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができません。
賃借権の対抗要件
原則は、賃借人は賃借権の登記があれば、新所有者に賃借権を主張できます。
しかし、賃借人には賃貸人に登記を請求する権利はないので、賃貸人は応じてくれないのが普通です。
私も不動産鑑定士として10年ぐらい働いていますが、賃借権が登記されているのを見たことがありません。
じゃあ、どうするのか?賃借人は困ってしまいますよね。
そこで、借地借家法で賃借人は以下のように保護されています。
- 借地借家法の借地権(土地の賃貸借の場合)・・・土地上の建物の登記を備えていることで、対抗力がある。
- 借地借家法の借家権(建物の賃貸借の場合)…建物の引き渡しが完了している場合に、対抗力がある。
賃貸借契約の存続期間
期間の定めのある場合
最長50年、期間を定めた場合は中途解約も認められません。
借地借家法上の借家権なら50年を超える期間も定めることができます。
期間を定めていない場合
期間を定めていない場合、いつでも解約の申し入れがあれば終了します。
土地の場合は、解約の申し入れから1年、建物の場合は3ケ月経てば終了する。
賃借権の転貸と解除理由 頻出
賃貸人と賃借人と賃貸借契約(ここでは原賃貸借契約といいます。)が解除されてしまった場合、転貸借契約はどうなるのでしょうか?
原賃貸借契約の解除理由によって、結論が逆になるのでよく出題されています。
まずは、原賃貸借契約が債務不履行で解除された場合をみていきましょう。
債務不履行の場合
原賃貸借契約が債務不履行で解除された場合、賃貸人は転借人に対して明け渡し請求できます。
理由 転貸借契約は原賃貸借契約の上に成り立っているので、原賃貸借契約がなくなると転貸借契約もなくなり、転借人は建物を明け渡さないといけません。
合意解除の場合
原賃貸借契約が合意解除された場合、賃貸人は転借人に対して明け渡し請求できません。
理由 賃貸人は賃借人が転貸借するときに、「OK!」と承諾しています。
その結果として、転借人は安心して住んでいたのに、賃貸人の気が変わって原賃貸借契約を合意解除して転借人に出て行って!と言えるとするのは、賃貸人が逆の意思表示をしていることになるため信義則上明け渡し請求は認められません。
敷金
賃貸借契約が終了した建物を明け渡すときに、賃借人に敷金返還請求権が発生します。
賃借人が敷金を返還してもらうにはまず、建物を明け渡す必要があり、明け渡しと敷金返還請求権は同時履行の関係にはなりません。
賃貸人が変更した場合
建物の売買などにより賃貸人が変更された場合、未払い賃料を控除した残額が新賃貸人に引き継がれます。
賃貸借と使用貸借の違い
賃貸借契約はお金を払ってもらう代わりに建物等を使わせてあげるというビジネス的な契約ですが、使用貸借は親子だから、よく知っているからという理由でタダで使わせてあげる恩恵的な契約になります。
使用貸借は、親子だからタダで使わせてあげているので、属人的な性格があります。
賃貸借と使用貸借の違いは表でまとめて覚えておきましょう。
賃貸借 | 使用貸借 | |
---|---|---|
契約の形式 | 有償・諾成契約 | 無償・諾成契約 |
借主の死亡 | 契約終了しない | 契約終了 |
必要費の支出 | 貸主に直ちに償還できる | 償還できない |
貸主の担保責任 | 負う | 負う場合がある (贈与の規定が準用) |
賃貸借の宅建過去問
次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、正しいものはどれか。
(判決文)
賃貸人は、特別の約定のないかぎり、賃借人から家屋明渡を受けた後に前記の敷金残額を返還すれば足りるものと解すべく、したがつて、家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にたつものではないと解するのが相当であり、このことは、賃貸借の終了原因が解除(解約) による場合であつても異なるところはないと解すべきである。
- 賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はない。
- 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、1個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものといえる。
- 賃貸借における敷金は、賃貸借の終了時点までに生じた債権を担保するものであって、賃貸人は、賃貸借終了後賃借人の家屋の明渡しまでに生じた債権を敷金から控除することはできない。
- 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務の間に同時履行の関係を肯定することは、家屋の明渡しまでに賃貸人が取得する一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質にも適合する。
答え:1
Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)が令和3年7月1日に締結された場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
- 本件契約について期間の定めをしなかった場合、AはBに対して、いつでも解約の申入れをすることができ、本件契約は、解約の申入れの日から3月を経過することによって終了する。
- 甲建物がBに引き渡された後、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。
- 甲建物が適法にBからDに転貸されている場合、AがDに対して本件契約が期間満了によって終了する旨の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から3月を経過することによって終了する。
- 本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約で、期間を5年、契約の更新がない旨を定めた場合、Aは、期間満了の1年前から6月前までの間に、Bに対し賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、従前の契約と同一条件で契約を更新したものとみなされる。
答え:2